埼北よみうり新聞

読売新聞購読案内

スポーツ報知新聞

048-599-0333
  • ホーム
  •  > 
  • 埼北市町村ガイド 滑川町

2021年12月24日 記事掲載

埼北市町村ガイド

埼北よみうり配布エリアの22市町村を順に紹介していく連載コーナー。歴史、文化、地理、産業、観光など、各市町村の特色を掲載いたします。

Vol.9 滑川町

町の魚ミヤコタナゴ

町の魚ミヤコタナゴ

東武東上線つきのわ駅

東武東上線つきのわ駅

古くから稲作が盛んな地域。福田(良質の米が取れる恵まれた土地の意)や和泉(清水が豊富に湧き出る土地の意)など、地名からもうかがえる。

 

1954年、荒川水系の滑川の流れで二分された北側の福田村と南側の宮前村が合併し、滑川村が誕生。84年に町制施行し、現在の滑川町が誕生した。

 

駅の開業を契機に町は発展していった。国営武蔵丘陵森林公園の開園(1974年)に先駆け、71年に東武東上線森林公園駅が開業される。2002年には、東武東上線つきのわ駅が新たに開業し、区画整理事業が本格化。町に移り住む人たちが増えたことを受け、2010年には町内3校目となる月の輪小学校が開校した。並行して進められてきた積極的な子育て支援政策が実を結び、この10年ほどで約2000人もの人口増加につながった。

 

区画整理などで、新しく住宅が建ち並ぶ一方で、自然環境の保全にも取り組む。2000年代に入ると、環境保全意識の高まりから、エコミュージアムセンターが開館、自然を生かした観光拠点として谷津の里や伊古の里などが整備された。

伝統の武州ころ柿づくり

伝統の武州ころ柿づくり

稲作を中心に農業が盛んな地域。町内に点在する大小合わせて約200のため池は、かんがい用水として利用されている。このため池を使った米は「谷津田米」としてブランド化され、町の名産として販売されている。

野菜、果物なども幅広く生産されているが近年、特産品として『復活』したのが干し柿「武州ころ柿」。ピーク時の昭和10年代には、東京市場に100万個が出荷されるなど、年末年始の農家の収入源とされていた。だんだんと作り手が少なくなっていく中、2013年に武州ころ柿協議会が発足。会員らは先達から伝統の製法を受け継ぎ、作られたころ柿は時期になると町内農産物直売所などに並ぶ。

農泊協議会による農業や豊かな自然を生かしたアグリツーリズムが人気を集めている。ころ柿づくり体験や野菜収穫体験、ため池の水を抜いての魚とり体験など、ここでしかできない宿泊体験ツアーを企画し、誘客を図っている。

森林公園の沼まつり(2019年)

森林公園の沼まつり(2019年)

古くからため池を使った米づくりが本格的に行われていて、ため池は地域住民にとってなくてはならないインフラとして認識されていた。このため池で一年に一回、「沼普請」と呼ばれる習わしがある。農閑期の10月頃に、ため池の水を抜き、漏水する箇所などがないか点検し、補修作業をする。その際、住民総出で魚やうなぎなどを捕まえることは、ひとつの楽しみでもあったという。今では沼普請が行われているため池はほとんどないというが、森林公園では秋に、この伝統的な魚とりを再現した「沼まつり」が恒例行事となっている。

町に根付く自然の恵みを大切にする文化は、国の天然記念物ミヤコタナゴがすむ環境を守ってきたともいえる。かつて関東地方に広く生息していたミヤコタナゴ。次々と姿を消していったが1985年前後に、町内のため池で生息が確認された。町は2000年、自然・文化の発信拠点として、エコミュージアムセンターを開館するとともに、ミヤコタナゴの野生復帰を目指す取り組みを続けている。

二ノ宮山展望塔からの一望

二ノ宮山展望塔からの一望

町の面積は29・68㎢。埼玉県のほぼ中央に位置し、関越自動車道の東松山ICからも近く、都内や近県からのアクセスが良い。地形はなだらかな丘陵地が町域の6割を占め、荒川水系の滑川、市野川が流れる。町北東部には、国営武蔵丘陵森林公園が設けられ、豊かな自然を生かした散策スポットなどが数多く、年間を通して大勢の人でにぎわう。

また、町内に約200のため池が造られ、蓄えた天水(雨水)を水田のかんがい用水に利用している。

春は見事な桜を咲かす二ノ宮山の頂上

春は見事な桜を咲かす二ノ宮山の頂上

町内随一の観光スポット、国営武蔵丘陵森林公園は、1974年に開園した全国初の国営公園。304ヘクタールもの広大な園内では、四季折々の草花の観賞や散策、サイクリングを楽しむことができる。アスレチックや子ども用の遊具も整備され、家族連れに人気のスポットだ。

ほかにも、豊かな自然を生かした観光名所として、谷津の里、伊古の里が挙げられる。谷津の里は2006年、町北部の福田地区に整備された。ふれあい農園を中心としたアグリツーリズムの地として、農園利用者だけでなく、たけのこ堀りやしいたけのコマ打ちなど、季節のイベントが催され、多くの人が足を運ぶ。伊古の里は2009年、町西部の伊古地区に整備された。こちらは町内最高峰の二ノ宮山(131.8m)からの眺望や、林間散策コースでのウォーキングが楽しめる。ため池・伊古新沼では、農閑期の11月から5月まで、フィッシングパークがオープンし、釣り人たちの憩いの場となっている。里の一角に店を構える農家レストランでは、地元の女性たちが旬の野菜を中心とした素材を使って作る素朴な料理が味わえる。

宮島勘左衛門の碑

宮島勘左衛門の碑

枇木づくりの創始者・宮島勘左衛門(1814~68年)は、旧月輪村(現滑川町)に生まれた。枇木とは、松の木を薄く削ったもので、食品を包む時などに使った。枇木生産は大正から昭和初期にかけて最盛期を迎え、月輪を中心とした地域では数百戸の農家が冬場の副業としていた。勘左衛門の偉業を称え建てられた碑は1986(昭和61)年、町有形文化財に指定された。

松尾芭蕉の研究に心血を注いだ俳人竹二坊(1759~1835年)は、1798(寛政10)年に「芭蕉翁正伝」を刊行した。

 

学校で給食を食べる児童

学校で給食を食べる児童

2025年までに人口2万人を目指し、各種政策を進めている。中でも、子育て支援策を積極的に打ち出している。子どもの医療費無料化は2011年から、対象年齢を18歳までに拡大。同時に、中学生以下の給食費の無償化もスタートさせた。17年からは支援金として、第3子以降の出産時、小学校入学時、中学校入学時にそれぞれ5万円を支給。合計特殊出生率は2019年に1.54となり、同年の全国平均1.36を上回った。20年には「子育てファースト滑川」を掲げ、さらなる支援の充実に力を注いでいく。

滑川町のデータ

人口 19,637人(令和3年12月1日現在)
世帯数 8,099(令和3年12月1日現在)
面積 29.68㎢
総生産額 885億800万円(平成30年度)

取材協力:滑川町

滑川町地図

Copyright © saihokuyomiuri.

埼北よみうり新聞

2021年12月24日 記事掲載

埼北市町村ガイド

Vol.9 滑川町

町の魚ミヤコタナゴ

町の魚ミヤコタナゴ

東武東上線つきのわ駅

東武東上線つきのわ駅

古くから稲作が盛んな地域。福田(良質の米が取れる恵まれた土地の意)や和泉(清水が豊富に湧き出る土地の意)など、地名からもうかがえる。

 

1954年、荒川水系の滑川の流れで二分された北側の福田村と南側の宮前村が合併し、滑川村が誕生。84年に町制施行し、現在の滑川町が誕生した。

 

駅の開業を契機に町は発展していった。国営武蔵丘陵森林公園の開園(1974年)に先駆け、71年に東武東上線森林公園駅が開業される。2002年には、東武東上線つきのわ駅が新たに開業し、区画整理事業が本格化。町に移り住む人たちが増えたことを受け、2010年には町内3校目となる月の輪小学校が開校した。並行して進められてきた積極的な子育て支援政策が実を結び、この10年ほどで約2000人もの人口増加につながった。

 

区画整理などで、新しく住宅が建ち並ぶ一方で、自然環境の保全にも取り組む。2000年代に入ると、環境保全意識の高まりから、エコミュージアムセンターが開館、自然を生かした観光拠点として谷津の里や伊古の里などが整備された。

伝統の武州ころ柿づくり

伝統の武州ころ柿づくり

稲作を中心に農業が盛んな地域。町内に点在する大小合わせて約200のため池は、かんがい用水として利用されている。このため池を使った米は「谷津田米」としてブランド化され、町の名産として販売されている。

野菜、果物なども幅広く生産されているが近年、特産品として『復活』したのが干し柿「武州ころ柿」。ピーク時の昭和10年代には、東京市場に100万個が出荷されるなど、年末年始の農家の収入源とされていた。だんだんと作り手が少なくなっていく中、2013年に武州ころ柿協議会が発足。会員らは先達から伝統の製法を受け継ぎ、作られたころ柿は時期になると町内農産物直売所などに並ぶ。

農泊協議会による農業や豊かな自然を生かしたアグリツーリズムが人気を集めている。ころ柿づくり体験や野菜収穫体験、ため池の水を抜いての魚とり体験など、ここでしかできない宿泊体験ツアーを企画し、誘客を図っている。

森林公園の沼まつり(2019年)

森林公園の沼まつり(2019年)

古くからため池を使った米づくりが本格的に行われていて、ため池は地域住民にとってなくてはならないインフラとして認識されていた。このため池で一年に一回、「沼普請」と呼ばれる習わしがある。農閑期の10月頃に、ため池の水を抜き、漏水する箇所などがないか点検し、補修作業をする。その際、住民総出で魚やうなぎなどを捕まえることは、ひとつの楽しみでもあったという。今では沼普請が行われているため池はほとんどないというが、森林公園では秋に、この伝統的な魚とりを再現した「沼まつり」が恒例行事となっている。

町に根付く自然の恵みを大切にする文化は、国の天然記念物ミヤコタナゴがすむ環境を守ってきたともいえる。かつて関東地方に広く生息していたミヤコタナゴ。次々と姿を消していったが1985年前後に、町内のため池で生息が確認された。町は2000年、自然・文化の発信拠点として、エコミュージアムセンターを開館するとともに、ミヤコタナゴの野生復帰を目指す取り組みを続けている。

二ノ宮山展望塔からの一望

二ノ宮山展望塔からの一望

町の面積は29・68㎢。埼玉県のほぼ中央に位置し、関越自動車道の東松山ICからも近く、都内や近県からのアクセスが良い。地形はなだらかな丘陵地が町域の6割を占め、荒川水系の滑川、市野川が流れる。町北東部には、国営武蔵丘陵森林公園が設けられ、豊かな自然を生かした散策スポットなどが数多く、年間を通して大勢の人でにぎわう。

また、町内に約200のため池が造られ、蓄えた天水(雨水)を水田のかんがい用水に利用している。

春は見事な桜を咲かす二ノ宮山の頂上

春は見事な桜を咲かす二ノ宮山の頂上

町内随一の観光スポット、国営武蔵丘陵森林公園は、1974年に開園した全国初の国営公園。304ヘクタールもの広大な園内では、四季折々の草花の観賞や散策、サイクリングを楽しむことができる。アスレチックや子ども用の遊具も整備され、家族連れに人気のスポットだ。

ほかにも、豊かな自然を生かした観光名所として、谷津の里、伊古の里が挙げられる。谷津の里は2006年、町北部の福田地区に整備された。ふれあい農園を中心としたアグリツーリズムの地として、農園利用者だけでなく、たけのこ堀りやしいたけのコマ打ちなど、季節のイベントが催され、多くの人が足を運ぶ。伊古の里は2009年、町西部の伊古地区に整備された。こちらは町内最高峰の二ノ宮山(131.8m)からの眺望や、林間散策コースでのウォーキングが楽しめる。ため池・伊古新沼では、農閑期の11月から5月まで、フィッシングパークがオープンし、釣り人たちの憩いの場となっている。里の一角に店を構える農家レストランでは、地元の女性たちが旬の野菜を中心とした素材を使って作る素朴な料理が味わえる。

宮島勘左衛門の碑

宮島勘左衛門の碑

枇木づくりの創始者・宮島勘左衛門(1814~68年)は、旧月輪村(現滑川町)に生まれた。枇木とは、松の木を薄く削ったもので、食品を包む時などに使った。枇木生産は大正から昭和初期にかけて最盛期を迎え、月輪を中心とした地域では数百戸の農家が冬場の副業としていた。勘左衛門の偉業を称え建てられた碑は1986(昭和61)年、町有形文化財に指定された。

松尾芭蕉の研究に心血を注いだ俳人竹二坊(1759~1835年)は、1798(寛政10)年に「芭蕉翁正伝」を刊行した。

学校で給食を食べる児童

学校で給食を食べる児童

2025年までに人口2万人を目指し、各種政策を進めている。中でも、子育て支援策を積極的に打ち出している。子どもの医療費無料化は2011年から、対象年齢を18歳までに拡大。同時に、中学生以下の給食費の無償化もスタートさせた。17年からは支援金として、第3子以降の出産時、小学校入学時、中学校入学時にそれぞれ5万円を支給。合計特殊出生率は2019年に1.54となり、同年の全国平均1.36を上回った。20年には「子育てファースト滑川」を掲げ、さらなる支援の充実に力を注いでいく。

滑川町のデータ

滑川町地図
人口 19,637人(令和3年12月1日現在)
世帯数 8,099(令和3年12月1日現在)
面積 29.68㎢
総生産額 885億800万円(平成30年度)

取材協力:滑川町