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2021年7月27日 記事掲載

埼北市町村ガイド

埼北よみうり配布エリアの22市町村を順に紹介していく連載コーナー。歴史、文化、地理、産業、観光など、各市町村の特色を掲載いたします。

Vol.5 東松山市

市の花・ぼたん(東松山ぼたん園)

市の花・ぼたん(東松山ぼたん園)

東松山市内には、県内で2番目に多い数とされる、600基以上の古墳が確認されている。これは、東松山地域が、古代から安心して暮らせる土地として人が集まり、栄えてきた証拠と言える。ヤマト王権と各地の豪族が同盟関係を結んだ証として贈られた「三角縁陳氏作四神二獣鏡」(市指定文化財)も県内で唯一発見されており、この辺り一帯を有力な豪族が支配していたことが伺われる。

東戦国時代には、市野川を天然の堀として利用した「松山城」が、現在の吉見町に築かれた。川の対岸の平地、現在の東松山市には城下町が形成された。近世になると交通の要衝として宿や市が開かれ、商業都市としての歩みを進めてきた。

1954年には比企郡松山町、大岡村、唐子村、高坂村、野本村の1町4村が合併し、市制がスタート。当初案は「松山市」であったが、四国の松山市と混同のおそれがあるということで「東松山市」に決定した。

三角縁陳氏作四神二獣鏡

三角縁陳氏作四神二獣鏡

東松山ハニーホワイト

東松山ハニーホワイト

市内では、米、野菜、果樹など、幅広く生産されている。中でも、甘みの強い白いトウモロコシ「東松山ハニーホワイト」や、梨が特産品として有名。特に、東平地区の梨栽培の始まりは古く、100年以上の歴史がある。梨の加工品も作られていて、梨ゼリーなどがある。

工業では、自動車関連部品を作る企業が多く点在する。都心や近県へのアクセスの良さを生かした積極的な企業誘致策を進め、近年では多くの企業が市外から拠点を移した。2014年には葛袋産業団地、17年には藤曲産業団地が新たに完成し、操業を続けている。

古くからの商業都市として、今も多くの商店街が形成され、奮闘している。商工業者と市、商工会が連携した取り組みも多い。専門店の知識を生かした「得する街のゼミナール」や、店ならではの商品等を100円で販売する「100円商店街お宝市」など、魅力発信や集客に努めている。商店街に新たな風を吹き込もうと、創業支援にも力を入れ、空き店舗の新規出店者への支援等により、市内創業を後押ししている。

藤曲産業団地

藤曲産業団地

辛みそだれで食べるやきとり

辛みそだれで食べるやきとり

東松山と言えばやきとりを思い出す方も多いだろう。東松山のやきとりは豚のカシラ肉を炭火でじっくりと焼き上げ、辛いみそだれをつけて食べるもので、1950年代に誕生したとされる。当時、カシラ肉はほとんどが食肉として使われていなかった。しかし、近隣の食肉センターで新鮮なカシラ肉が手に入ったことから、次第にやきとりとして提供されるようになった。現在、市内には約50店の専門店が軒を連ねている。独自に調合したみそだれは、各店の個性を生み、客を引き付ける魅力となっている。

日本スリーデーマーチ

日本スリーデーマーチ

長い時間をかけて根付いたものといえば、ウォーキングがある。1978年にスタートした日本最大のウォーキングイベントが「日本スリーデーマーチ」で、50㎞から5㎞の6コースから選んで参加でき、3日間開催する。日本だけでなく、世界各地から参加者が集い、延べ8万人を超える大会となっている。自然豊かな比企丘陵を歩くだけでなく、もてなす側の市民と参加者、そして参加者同士の交流も大会の魅力のひとつで、長年継続している大きな要因にもなっている。

市全域は面積65.35㎢。埼玉県のほぼ中央に位置している。市中央部には1975年に開通された関越自動車道の東松山ICがあり、近県からのアクセスも良い。丘陵地帯として起伏に富み、市内を荒川水系の都幾川や市野川が流れ、自然豊かな土地柄。都幾川にかかる鞍掛橋周辺を整備した「くらかけ清流の郷バーベキュー場」は、川遊びスポットとして人気を集める。農業が盛んで、東平地区は梨の産地として知られ、白いトウモロコシ「東松山ハニーホワイト」は市の特産として認知度が高まっている。

家族連れに人気のくらかけ清流の郷

家族連れに人気のくらかけ清流の郷

梨の産地(東平地区)

梨の産地(東平地区)

年間を通して楽しめる場所の代表格が、埼玉県こども動物自然公園。コアラやクオッカ、キリンなど、たくさんの愛らしい動物が見られることもあって、家族連れに人気のスポットとなっている。

「花とウォーキングのまち」を掲げているだけあり、桜、ツツジ、ヒマワリなど、市内に咲く四季折々の花を目当てに、市内外から大勢の人が足を運ぶ。中でも、市の花であるぼたんは見事。4月中旬から5月上旬、東松山ぼたん園は約65,000株、箭弓稲荷神社では約1,300株が花を咲かす。

ウォーキングは、毎年11月上旬に開催される「日本スリーデーマーチ」が有名。全国各地のみならず、世界中の人が訪れる日本最大のウォーキングイベントだ。コースは市内だけでなく、比企丘陵を中心に12市町村で設定されている。3日間歩くと、最長で150㎞を完歩することになる。県内でも珍しい施設、ウォーキングセンターも備え、毎月様々なコースを巡るウォーキング事業を開催している。

梨狩りなど、古くから観光農業が盛んな土地柄だが、新たな農業と観光の拠点として期待されるのが東松山市農林公園で、2019年にリニューアルオープンした。「農とふれあうテーマパーク」をコンセプトに、イチゴの摘み取りや野菜の収穫体験が楽しめる。20年には、地産農産物を使った軽食やランチを提供するカフェが園内にオープンした。

2015年、東松山出身の梶田隆章さんがノーベル物理学賞を受賞。素粒子の一種であるニュートリノが質量を持つことを発見した功績が認められたもので、県内初の同賞受賞者となった。現在は、東京大学宇宙線研究所長・教授や日本学術会議会長などを歴任し、科学の発展に寄与している。市は2016年、梶田さんの後進となる子どもたちを育成する取り組みを支援するため、梶田隆章基金を設立した。

各分野で活躍する市ゆかりの著名人が、地域の魅力を発信する東松山市應援團員を務めている。メゾ・ソプラノ歌手の林美智子さんやお笑い芸人のだいたひかるさんなど、現在15組が委嘱されている。

梶田さん(写真提供/東京大学宇宙線研究所)

梶田さん(写真提供/東京大学宇宙線研究所)

 
農業塾(野菜コース)

農業塾(野菜コース)

市民が住み慣れた地域で健やかに安心して暮らせるように、市は地域福祉の充実を重点課題のひとつとし、「心のこもった地域福祉プロジェクト2020」を推進している。その一環として、市内7地区それぞれで住民同士の助け合い活動について、住民が主体となって話し合い、移動販売の実施など、支え合いサポート事業の充実に取り組んでいる。

2020年、地域ブランド認定制度「ひがしまつやまプライド」を創設。東松山市内の優れた製品を認定し、市内外へ発信することで、産業振興、経済活性化を図る。ブランドの認定ランクをステップアップ形式としたことで、認定事業者を継続的に応援する仕組みとなっている。これまでに8品が認定を受けている。

農業の未来へ向けた投資も進め、農業の担い手の確保・育成に力を入れている。農業の基礎知識や技術を学ぶ場として、農業塾を開講している。コースは野菜と梨に分かれ、1年間を通して実践的に学ぶ。受講生は修了後、市内農家らの手伝いで経験を積み、新規就農の道を目指す。

東松山市のデータ

人口 90,327人(令和3年8月1日現在)
世帯数 41,409(令和3年8月1日現在)
面積 65.35㎢
総生産額 3,497億7,100万円(平成30年度)

取材協力:東松山市

東松山市地図

Copyright © saihokuyomiuri.

埼北よみうり新聞

2021年7月23日 記事掲載

埼北市町村ガイド

5.東松山市

Vol.5 東松山市

市の花・ぼたん(東松山ぼたん園)

市の花・ぼたん(東松山ぼたん園)

東松山市内には、県内で2番目に多い数とされる、600基以上の古墳が確認されている。これは、東松山地域が、古代から安心して暮らせる土地として人が集まり、栄えてきた証拠と言える。ヤマト王権と各地の豪族が同盟関係を結んだ証として贈られた「三角縁陳氏作四神二獣鏡」(市指定文化財)も県内で唯一発見されており、この辺り一帯を有力な豪族が支配していたことが伺われる。

東戦国時代には、市野川を天然の堀として利用した「松山城」が、現在の吉見町に築かれた。川の対岸の平地、現在の東松山市には城下町が形成された。近世になると交通の要衝として宿や市が開かれ、商業都市としての歩みを進めてきた。

1954年には比企郡松山町、大岡村、唐子村、高坂村、野本村の1町4村が合併し、市制がスタート。当初案は「松山市」であったが、四国の松山市と混同のおそれがあるということで「東松山市」に決定した。

三角縁陳氏作四神二獣鏡

三角縁陳氏作四神二獣鏡

東松山ハニーホワイト

東松山ハニーホワイト

市内では、米、野菜、果樹など、幅広く生産されている。中でも、甘みの強い白いトウモロコシ「東松山ハニーホワイト」や、梨が特産品として有名。特に、東平地区の梨栽培の始まりは古く、100年以上の歴史がある。梨の加工品も作られていて、梨ゼリーなどがある。

工業では、自動車関連部品を作る企業が多く点在する。都心や近県へのアクセスの良さを生かした積極的な企業誘致策を進め、近年では多くの企業が市外から拠点を移した。2014年には葛袋産業団地、17年には藤曲産業団地が新たに完成し、操業を続けている。

古くからの商業都市として、今も多くの商店街が形成され、奮闘している。商工業者と市、商工会が連携した取り組みも多い。専門店の知識を生かした「得する街のゼミナール」や、店ならではの商品等を100円で販売する「100円商店街お宝市」など、魅力発信や集客に努めている。商店街に新たな風を吹き込もうと、創業支援にも力を入れ、空き店舗の新規出店者への支援等により、市内創業を後押ししている。

藤曲産業団地

藤曲産業団地

辛みそだれで食べるやきとり

辛みそだれで食べるやきとり

東松山と言えばやきとりを思い出す方も多いだろう。東松山のやきとりは豚のカシラ肉を炭火でじっくりと焼き上げ、辛いみそだれをつけて食べるもので、1950年代に誕生したとされる。当時、カシラ肉はほとんどが食肉として使われていなかった。しかし、近隣の食肉センターで新鮮なカシラ肉が手に入ったことから、次第にやきとりとして提供されるようになった。現在、市内には約50店の専門店が軒を連ねている。独自に調合したみそだれは、各店の個性を生み、客を引き付ける魅力となっている。

日本スリーデーマーチ

日本スリーデーマーチ

長い時間をかけて根付いたものといえば、ウォーキングがある。1978年にスタートした日本最大のウォーキングイベントが「日本スリーデーマーチ」で、50㎞から5㎞の6コースから選んで参加でき、3日間開催する。日本だけでなく、世界各地から参加者が集い、延べ8万人を超える大会となっている。自然豊かな比企丘陵を歩くだけでなく、もてなす側の市民と参加者、そして参加者同士の交流も大会の魅力のひとつで、長年継続している大きな要因にもなっている。

市全域は面積65.35㎢。埼玉県のほぼ中央に位置している。市中央部には1975年に開通された関越自動車道の東松山ICがあり、近県からのアクセスも良い。丘陵地帯として起伏に富み、市内を荒川水系の都幾川や市野川が流れ、自然豊かな土地柄。都幾川にかかる鞍掛橋周辺を整備した「くらかけ清流の郷バーベキュー場」は、川遊びスポットとして人気を集める。農業が盛んで、東平地区は梨の産地として知られ、白いトウモロコシ「東松山ハニーホワイト」は市の特産として認知度が高まっている。

家族連れに人気のくらかけ清流の郷

家族連れに人気のくらかけ清流の郷

梨の産地(東平地区)

梨の産地(東平地区)

年間を通して楽しめる場所の代表格が、埼玉県こども動物自然公園。コアラやクオッカ、キリンなど、たくさんの愛らしい動物が見られることもあって、家族連れに人気のスポットとなっている。

「花とウォーキングのまち」を掲げているだけあり、桜、ツツジ、ヒマワリなど、市内に咲く四季折々の花を目当てに、市内外から大勢の人が足を運ぶ。中でも、市の花であるぼたんは見事。4月中旬から5月上旬、東松山ぼたん園は約65,000株、箭弓稲荷神社では約1,300株が花を咲かす。

ウォーキングは、毎年11月上旬に開催される「日本スリーデーマーチ」が有名。全国各地のみならず、世界中の人が訪れる日本最大のウォーキングイベントだ。コースは市内だけでなく、比企丘陵を中心に12市町村で設定されている。3日間歩くと、最長で150㎞を完歩することになる。県内でも珍しい施設、ウォーキングセンターも備え、毎月様々なコースを巡るウォーキング事業を開催している。

梨狩りなど、古くから観光農業が盛んな土地柄だが、新たな農業と観光の拠点として期待されるのが東松山市農林公園で、2019年にリニューアルオープンした。「農とふれあうテーマパーク」をコンセプトに、イチゴの摘み取りや野菜の収穫体験が楽しめる。20年には、地産農産物を使った軽食やランチを提供するカフェが園内にオープンした。

2015年、東松山出身の梶田隆章さんがノーベル物理学賞を受賞。素粒子の一種であるニュートリノが質量を持つことを発見した功績が認められたもので、県内初の同賞受賞者となった。現在は、東京大学宇宙線研究所長・教授や日本学術会議会長などを歴任し、科学の発展に寄与している。市は2016年、梶田さんの後進となる子どもたちを育成する取り組みを支援するため、梶田隆章基金を設立した。

各分野で活躍する市ゆかりの著名人が、地域の魅力を発信する東松山市應援團員を務めている。メゾ・ソプラノ歌手の林美智子さんやお笑い芸人のだいたひかるさんなど、現在15組が委嘱されている。

梶田さん(写真提供/東京大学宇宙線研究所)

梶田さん(写真提供/東京大学宇宙線研究所)

農業塾(野菜コース)

農業塾(野菜コース)

市民が住み慣れた地域で健やかに安心して暮らせるように、市は地域福祉の充実を重点課題のひとつとし、「心のこもった地域福祉プロジェクト2020」を推進している。その一環として、市内7地区それぞれで住民同士の助け合い活動について、住民が主体となって話し合い、移動販売の実施など、支え合いサポート事業の充実に取り組んでいる。

2020年、地域ブランド認定制度「ひがしまつやまプライド」を創設。東松山市内の優れた製品を認定し、市内外へ発信することで、産業振興、経済活性化を図る。ブランドの認定ランクをステップアップ形式としたことで、認定事業者を継続的に応援する仕組みとなっている。これまでに8品が認定を受けている。

農業の未来へ向けた投資も進め、農業の担い手の確保・育成に力を入れている。農業の基礎知識や技術を学ぶ場として、農業塾を開講している。コースは野菜と梨に分かれ、1年間を通して実践的に学ぶ。受講生は修了後、市内農家らの手伝いで経験を積み、新規就農の道を目指す。

東松山市のデータ

東松山市地図
人口 90,327人(令和3年8月1日現在)
世帯数 41,409(令和3年8月1日現在)
面積 65.35㎢
総生産額 3,497億7,100万円(平成30年度)

取材協力:東松山市