埼北よみうり新聞

読売新聞購読案内

スポーツ報知新聞

048-599-0333
  • ホーム
  •  > 
  • 埼北市町村ガイド 秩父市

2021年5月28日 記事掲載

埼北市町村ガイド

埼北よみうり配布エリアの22市町村を順に紹介していく連載コーナー。歴史、文化、地理、産業、観光など、各市町村の特色を掲載いたします。

Vol.3 秩父市

秩父夜祭

秩父夜祭

秩父神社

絹大市が立った秩父神社

秩父地域の人類の足跡は、近年の下蒔田遺跡の発掘調査で、約1万6000年前のナイフ形石器が出土したことから旧石器時代後期まで遡ることができる。

「ちちぶ」の名の歴史は古く、延喜年間(901~923年)に成立したといわれる。『旧事本紀』に納められている『国造本紀』には、「知知夫国造、 瑞籬朝の御世に八意思兼命の十世の孫、知知夫彦命国造に定め賜ふ」とあり、秩父地方が東国にあっていち早く国造(地方長官)が任命されたことになる。708年には、秩父郡から自然銅が 産出され、中央政府へ献上されたことから「慶雲」から「和銅」に改元された。自然銅の産出場所は明らかではないが、秩父市黒谷地区が有力といわれている。

中世には、関東一円に勢力を伸ばした平氏が秩父氏を称した。戦国時代には、鉢形北条氏の支配下となり、隣国の甲斐武田氏との備えの拠点になった。

江戸時代には、秩父札所が信仰を集め、多くの巡礼者が訪れるようになった。なりわいとして養蚕が盛んになり、各地に絹市が設けられるなど「秩父絹」は 隆盛を極めた。中でも妙見宮(秩父神社)に立った市は最大で、絹大市と呼ばれた。旧暦の霜月(11月)1日から6日までの絹大市の間には、妙見宮の冬祭りも執り行われ、大いににぎわいをみせた。 その付祭は現在、「秩父夜祭」として知られ、日本三大曳山祭に数えられている。

秩父銘仙
秩父銘仙

秩父では、古くから絹織物が産業として栄えた。起源は、知知夫彦命が養蚕と機織の技術を伝えたとされ、朝廷にも献上されたという。 山に囲まれた地形で、稲作に向かないことから養蚕業が盛んになり、江戸時代には幕府の衣冠束帯用に秩父絹が採用された。品質堅牢で「鬼秩父」などと称され、全国に名を馳せた。

明治後期になると経糸に型染めし、仮織の緯糸をほぐしながら製織する「ほぐし捺染」の技法で仕立てる平織りの絹織物「秩父銘仙」が創案された。 華やかで大胆なデザイン、表裏のない生地が特徴で、大正・昭和初期には女性のおしゃれ着として全国で人気を誇った。戦後、生活様式の変化によって着物の需要は激減したが、技の伝 承は続いている。2013年には、国の伝統的工芸品に指定された。

秩父そば
風味豊かな荒川そば

農業は、ブドウ、ブルーベリーなどの果樹栽培が盛んで、イチゴなどと合わせて観光農園が中心となっている。 ブドウは、「ちちぶ山ルビー」など秩父地域独自のブランド品種の栽培が進められている。

 

荒川地域では、養蚕に用いられた桑の転換作物として、在来種のそばの生産が振興され「そばの里あらかわ」と呼ばれる。 秩父のそばは、コシが強く風味豊かで、地元のそば店では「挽きたて、打ちたて、茹でたて」を堪能できる。

中津川いも、秩父太白いもなど古くから地域で栽培される独自の野菜もある。

イチローズモルト
世界に誇るウイスキーブランド「イチローズモルト」

奥秩父連峰から流れ出る清流が育む酒どころで、日本酒の蔵元を始め、ワイナリー、ウイスキー蒸溜所、クラフトビールのブルワリー など多種の酒造会社が集っている。「良質な水と寒暖差の激しい気候」という酒造りにおいて絶好の環境に恵まれ、文化的にも秩父地域内の神社仏閣の多さから「1年を 通じて祭りが行われる」といわれるほど酒の振る舞われる機会が多いという背景がある。

郷土料理の代表は、農作業の合間や小腹がすいた時に食べられてきた「小昼飯」。地元産の小麦・そばなどの穀物や野菜などを 食材に、麺料理・まんじゅうなど〝和点心〟と称されるほど種類豊富。一口大に切ってゆでたジャガイモに、小麦粉の衣をつけてからっと揚げ、甘辛いみそダレを かけていただく「みそポテト」は、埼玉県B級グルメとして人気を博している。

武甲山と秩父市街地
武甲山と秩父市街地

県北西部に位置する秩父市の面積は、577.83㎢で県全体の約15%を占める。市街地は、武甲山など周囲に山岳丘陵を眺める盆地を形成し、 市域の87%は森林。ほとんどは、秩父多摩甲斐国立公園をはじめ、武甲・西秩父などの県立自然公園の区域に指定され、自然環境に恵まれた地域になっている。

市の中心部は、荒川によって東西に分かれ、東部の平地に市街地、西部丘陵地帯の平地には農業用地が分布している。

気候は、山地・盆地であるため寒暖の差が大きく、ブドウなど果樹の栽培が盛んになっている。山岳地域では、冬季にかなりの積雪となる場合がある。

羊山公園
羊山公園「芝桜の丘」

自然・歴史・文化にあふれる地域で、四季折々の観光スポットが満載。都心から電車で約1時間半とアクセス良好で、1年を通じて多くの観光者を集める。

羊山公園内にある「芝桜の丘」には、40万株を超える芝桜が植栽されている。春には絨毯を敷き詰めたように白やピンク、淡い青などの花が咲き誇り「芝桜まつり」 が催される。「秩父夜祭」、五穀豊穣・天下泰平を願って手作りロケットを奉納する神事「龍勢祭」など全国から注目を集める行事が数多くある。

三十槌の氷柱
三十槌の氷柱

奥秩父の険しくも美しい自然は魅力にあふれ、中津川沿いに約10㎞続く中津峡の紅葉、岩肌にしみ出る湧水が凍ってできる「三十槌の氷柱」は圧巻。標高約1,100mの 地に鎮座する霊験あらたかな三峯神社は、「関東屈指のパワースポット」と称されている。

近年では、秩父地域全体が貴重な地質遺産・自然・文化を有することから「日本ジオパーク」の認定を受け、ガイドツアーなどが活発化。秩父を舞台にしたアニメ作品の ヒットもあり、作中に登場した場所を巡る若い人の姿も多くなっている。外国人旅行者の受け入れ「インバウンド」の事業拡大にも力を注いでいる。

柿原萬蔵像
秩父鉄道の創設者・柿原萬蔵像

秩父鉄道の前身である上武鉄道を創設した柿原萬蔵(1860~1919年)は、秩父郡下の交通・輸送の改善を図るため、 秩父から館林に至る鉄道の敷設計画を立てた。幾多の難局 を打開して通した鉄道は、地域交通・地場産業・観光産業を支えている。

 

芸能界では、国民的人気番組「笑点」でおなじみの落語家・林家たい平さん、演歌歌手の冠二郎さん、ロックバンド・ THE ALFEEの桜井賢さん、俳優の藤原竜也さんらが活躍している。

 

ドローン
物資を空輸するドローン

将来の都市像に、「豊かなまち、環境文化都市ちちぶ」を掲げ、「産業経済」「医療・福祉・保健」「子育て・教育」「環境」「社会基盤」の5分野を軸に、 先人から継承されてきた誉れ高い歴史・文化を次世代に伝えながら質の高い経済活動・社会基盤の形成を目指していく。

人口減少・少子高齢化を見据えたまちづくりへと視点を大きく転換させ、IoT(あらゆるモノが インターネットとつながる仕組み)を活用した「Society(ソサエティ)5.0」(山間地域におけるスマートモビリティによる生活交通・物流融合事業)の実証実験がスタート。通信技術やAI(人工知能)、 ドローン(無人航空機)などの最先端技術を活用した山間地域の課題解決を推進している。

同事業は、「ドローンによる日用品・医薬品の輸送」「電気自動車・自動運転を活用した乗り合いの公共交通機関、貨客混載による交通・物流の利便性向上」 「電子機器を利用した遠隔医療」を柱に据え、2024年の社会実装を目指している。災害時にも大きな役割を果たすことが期待される。

秩父市のデータ

人口 60,681人(令和3年6月1日現在)
世帯数 26,443(令和3年6月1日現在)
面積 577.83㎢
総生産額 2,149億3,618万円(平成30年度)

取材協力:秩父市

秩父市地図

Copyright © saihokuyomiuri.

埼北よみうり新聞

2021年5月28日 記事掲載

埼北市町村ガイド

3.秩父市

Vol.3 秩父市

秩父夜祭

秩父夜祭

秩父神社

絹大市が立った秩父神社

秩父地域の人類の足跡は、近年の下蒔田遺跡の発掘調査で、約1万6000年前のナイフ形石器が出土したことから旧石器時代後期まで遡ることができる。

「ちちぶ」の名の歴史は古く、延喜年間(901~923年)に成立したといわれる。『旧事本紀』に納められている『国造本紀』には、「知知夫国造、 瑞籬朝の御世に八意思兼命の十世の孫、知知夫彦命国造に定め賜ふ」とあり、秩父地方が東国にあっていち早く国造(地方長官)が任命されたことになる。708年には、秩父郡から自然銅が 産出され、中央政府へ献上されたことから「慶雲」から「和銅」に改元された。自然銅の産出場所は明らかではないが、秩父市黒谷地区が有力といわれている。

中世には、関東一円に勢力を伸ばした平氏が秩父氏を称した。戦国時代には、鉢形北条氏の支配下となり、隣国の甲斐武田氏との備えの拠点になった。

秩父銘仙
秩父銘仙

秩父では、古くから絹織物が産業として栄えた。起源は、知知夫彦命が養蚕と機織の技術を伝えたとされ、朝廷にも献上されたという。 山に囲まれた地形で、稲作に向かないことから養蚕業が盛んになり、江戸時代には幕府の衣冠束帯用に秩父絹が採用された。品質堅牢で「鬼秩父」などと称され、全国に名を馳せた。

明治後期になると経糸に型染めし、仮織の緯糸をほぐしながら製織する「ほぐし捺染」の技法で仕立てる平織りの絹織物「秩父銘仙」が創案された。 華やかで大胆なデザイン、表裏のない生地が特徴で、大正・昭和初期には女性のおしゃれ着として全国で人気を誇った。戦後、生活様式の変化によって着物の需要は激減したが、技の伝 承は続いている。2013年には、国の伝統的工芸品に指定された。

秩父そば
風味豊かな荒川そば

農業は、ブドウ、ブルーベリーなどの果樹栽培が盛んで、イチゴなどと合わせて観光農園が中心となっている。 ブドウは、「ちちぶ山ルビー」など秩父地域独自のブランド品種の栽培が進められている。

 

荒川地域では、養蚕に用いられた桑の転換作物として、在来種のそばの生産が振興され「そばの里あらかわ」と呼ばれる。 秩父のそばは、コシが強く風味豊かで、地元のそば店では「挽きたて、打ちたて、茹でたて」を堪能できる。

中津川いも、秩父太白いもなど古くから地域で栽培される独自の野菜もある。

 

イチローズモルト
世界に誇るウイスキーブランド「イチローズモルト」

奥秩父連峰から流れ出る清流が育む酒どころで、日本酒の蔵元を始め、ワイナリー、ウイスキー蒸溜所、クラフトビールのブルワリー など多種の酒造会社が集っている。「良質な水と寒暖差の激しい気候」という酒造りにおいて絶好の環境に恵まれ、文化的にも秩父地域内の神社仏閣の多さから「1年を 通じて祭りが行われる」といわれるほど酒の振る舞われる機会が多いという背景がある。

郷土料理の代表は、農作業の合間や小腹がすいた時に食べられてきた「小昼飯」。地元産の小麦・そばなどの穀物や野菜などを 食材に、麺料理・まんじゅうなど〝和点心〟と称されるほど種類豊富。一口大に切ってゆでたジャガイモに、小麦粉の衣をつけてからっと揚げ、甘辛いみそダレを かけていただく「みそポテト」は、埼玉県B級グルメとして人気を博している。

武甲山と秩父市街地
武甲山と秩父市街地

県北西部に位置する秩父市の面積は、577.83㎢で県全体の約15%を占める。市街地は、武甲山など周囲に山岳丘陵を眺める盆地を形成し、 市域の87%は森林。ほとんどは、秩父多摩甲斐国立公園をはじめ、武甲・西秩父などの県立自然公園の区域に指定され、自然環境に恵まれた地域になっている。

市の中心部は、荒川によって東西に分かれ、東部の平地に市街地、西部丘陵地帯の平地には農業用地が分布している。

気候は、山地・盆地であるため寒暖の差が大きく、ブドウなど果樹の栽培が盛んになっている。山岳地域では、冬季にかなりの積雪となる場合がある。

羊山公園
羊山公園「芝桜の丘」

自然・歴史・文化にあふれる地域で、四季折々の観光スポットが満載。都心から電車で約1時間半とアクセス良好で、1年を通じて多くの観光者を集める。

羊山公園内にある「芝桜の丘」には、40万株を超える芝桜が植栽されている。春には絨毯を敷き詰めたように白やピンク、淡い青などの花が咲き誇り「芝桜まつり」 が催される。「秩父夜祭」、五穀豊穣・天下泰平を願って手作りロケットを奉納する神事「龍勢祭」など全国から注目を集める行事が数多くある。

三十槌の氷柱
三十槌の氷柱

奥秩父の険しくも美しい自然は魅力にあふれ、中津川沿いに約10㎞続く中津峡の紅葉、岩肌にしみ出る湧水が凍ってできる「三十槌の氷柱」は圧巻。標高約1,100mの 地に鎮座する霊験あらたかな三峯神社は、「関東屈指のパワースポット」と称されている。

近年では、秩父地域全体が貴重な地質遺産・自然・文化を有することから「日本ジオパーク」の認定を受け、ガイドツアーなどが活発化。秩父を舞台にしたアニメ作品の ヒットもあり、作中に登場した場所を巡る若い人の姿も多くなっている。外国人旅行者の受け入れ「インバウンド」の事業拡大にも力を注いでいる。

柿原萬蔵像
秩父鉄道の創設者・柿原萬蔵像

秩父鉄道の前身である上武鉄道を創設した柿原萬蔵(1860~1919年)は、秩父郡下の交通・輸送の改善を図るため、 秩父から館林に至る鉄道の敷設計画を立てた。幾多の難局 を打開して通した鉄道は、地域交通・地場産業・観光産業を支えている。

 

芸能界では、国民的人気番組「笑点」でおなじみの落語家・林家たい平さん、演歌歌手の冠二郎さん、ロックバンド・ THE ALFEEの桜井賢さん、俳優の藤原竜也さんらが活躍している。

 

ドローン
物資を空輸するドローン

将来の都市像に、「豊かなまち、環境文化都市ちちぶ」を掲げ、「産業経済」「医療・福祉・保健」「子育て・教育」「環境」「社会基盤」の5分野を軸に、 先人から継承されてきた誉れ高い歴史・文化を次世代に伝えながら質の高い経済活動・社会基盤の形成を目指していく。

人口減少・少子高齢化を見据えたまちづくりへと視点を大きく転換させ、IoT(あらゆるモノが インターネットとつながる仕組み)を活用した「Society(ソサエティ)5.0」(山間地域におけるスマートモビリティによる生活交通・物流融合事業)の実証実験がスタート。通信技術やAI(人工知能)、 ドローン(無人航空機)などの最先端技術を活用した山間地域の課題解決を推進している。

同事業は、「ドローンによる日用品・医薬品の輸送」「電気自動車・自動運転を活用した乗り合いの公共交通機関、貨客混載による交通・物流の利便性向上」 「電子機器を利用した遠隔医療」を柱に据え、2024年の社会実装を目指している。災害時にも大きな役割を果たすことが期待される。

秩父市のデータ

秩父市地図
人口 60,681人(令和3年6月1日現在)
世帯数 26,443(令和3年6月1日現在)
面積 577.83㎢
総生産額 2,149億3,618万円(平成30年度)

取材協力:秩父市